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出版案内!!
『音楽教育への挑戦』
日本最初の私立音楽学校誕生物語

(日本音楽学校出版部)
10月下旬発売予定




 
 この本は4人の執筆者がそれぞれの視点から、日本最初の音楽学校「日本音楽学校」を創立した山田源一郎の教育・研究活動を追ったものです。山田源一郎は明治36年に東京音楽学校(現在の東京芸術大学音楽学部)の教授を辞して、神田・錦町で音楽教育を開始しました。日本最初の私立音楽学校に着手したのです。音楽教育の大切さや教育のあり方そのものが理解されていなかった時代に、山田は何を考え、何を教えていたのでしょうか。音楽家として、また音楽教育者として山田が私立音楽学校での音楽教育に献身した業績は、大正・昭和になって音楽学校や大学が生まれてくる礎であるといって過言ではありません。
なおこの本は日本音楽学校創立100周年を記念して出版されました。お求めは本校まで。

 内容を以下に簡単に紹介します。

 第一章
 「山田源一郎と日本音楽教育事始め」 筒石 賢昭

 第二章     
 「山田源一郎の音楽教育と幼児教育への挑戦」
   第一節  「教育のイノベーター」 小林 志郎
   第二節  「幼児教育と音楽」   浦崎まり子

 第三章
 「日本最初の私立音楽学校の誕生」 筒石 賢昭 
 「音楽遊戯協会の創設」
 「音楽遊戯協会から日本音楽学校へ」

 第四章
 「山田源一郎の教育業績と啓蒙活動」 筒石 賢昭

 第五章
 「山田源一郎と音楽会」 三小田美稲子
   第一節  「洋楽演奏の始まりと東京音楽学校」
   第二節  「山田源一郎と演奏団体」

 年 表
  「山田源一郎関連年表」  櫻井 剛、 山本 直樹


 以下に編集後記を掲載しておきます。編集方針や内容を伺い知ることができると思います。





 日本音楽学校・百年史編集委員会をスタートさせたのは十五ヶ月前です。明治三十六年に本校の前身「音楽遊戯協会」が誕生して今年がちょうど百年になるのを記念して、単なる「日本音楽学校」沿革史ではない、「西洋音楽教育事始」または「私立音楽学校教育事始」とタイトルを冠してよい本を作りたいと三浦理事長から私に相談がありました。理事長は、音楽遊戯協会と同協会が発展して生まれた女子音楽学校こそ西洋音楽教育を行った日本最初の私立学校であることの歴史的認識を世間に広めたいというピュアな願いを持っています。

 編集会議では、「日本最初の私立音楽学校史」または「私立音楽学校の西洋音楽教育はいつ、どのようにスタートしたか」をテーマに、執筆者は与えられた章の内容をいろいろなスタイルで掘り下げることにしました。

 伊沢修二に『洋楽事始 音楽取調成績申報書』があります。伊沢がその著書に「事始」と使ってしまうとどうも私たちの「音楽教育事始」というタイトはオリジナリティに欠けるように思えます。

 『日本の洋楽百年史(井上武士監修・秋山龍英編著)』、『洋楽導入者の軌跡−日本近代洋学史序説(中村理平)』、『音楽五十年(園部三郎)』、『音楽五十年史(堀内敬三)』など数々の音楽史の書物はありますが、音楽教育史の本は非常に少ないのです。ならば「音楽教育事始」でもよろしいという議論もありますが、山田源一郎日本音楽学校にフォーカスをあてると山田の挑戦的な教育活動が浮かび上がってきます。その実体は「事始」という客観的な視点では描写しがたい、「私(山田)の音楽教育」を創出する葛藤とプロセスに見いだされます。またそこにこそ今日的な意義があると思われます。

 伊沢は国の学校作りで苦労したが、山田は国の学校を捨てて自分の学校を作って苦労したのだ。山田は私学で、いいかえれば自分のお金で、自分の理念とシステムで音楽教育を実践しようとした挑戦者なんだ。このような議論を経てこの本は生まれてきました。

 ここで私たちもお力を貸してくださった方々にお礼を申し上げたい。

 まず、山田源一郎氏の御孫さんの山田従矩氏やご兄弟のみなさまに心からお礼申し上げます。私たちの無理な願いを聞いて、百年前の写真、雑誌、手紙などを探し出してくださいました。お陰でいくつかの不明な点を解明することができました。

 十文字学園の工藤哲郎氏に厚く感謝の意を表します。工藤氏は長年、山田源一郎研究に従事して来られました。その契機は、日本でのマンドリン演奏の歴史研究から、マンドリン教育の研究、そして山田とマンドリン教育の研究へと展開し、いつしか山田源一郎と音楽教育の研究へと発展されました。一人の研究者が十数年かけて集めた膨大な量の資料をきちんと時系列で整理なさった年表を拝借することができました。私たちは工藤氏の資料を片手に持ちながら図書館、大学、資料館等をたずねました。

 最後に東京学芸大学・筒石賢昭 教授には実に多くの時間とエネルギーを傾注して頂きました。プロジェクト・コーディネーター兼執筆者として大活躍していただきました。他の執筆者も啓発され気持ちのよい仕事をすることができました。

 最後に、資料を注意深く検討しながら間違いのない内容を書き上げるように努力しました。それでも調査不足、間違い、別資料の存在を知らないことなどがあるかもしれません。みなさま方のご指導をいただければ幸いです。
                       (小林 志郎)

 




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